耳鳴り(TRT療法)

 日常生活の中で実際には音がないのに聞こえる状態を耳鳴りといい、本人にしか聞こえていません。現在では、耳鳴りにお悩みの方が40歳以上の人に約2割、特に高齢者では3割に及び、人口の5%の人が生活に支障のある耳鳴を感じているとの報告もあります。耳鳴りの原因のほとんどは加齢による難聴に伴うものですが、聴神経腫瘍などの原因疾患が見つかることもあります。耳鳴りの症状をお持ちの方は一度お気軽にご相談ください。


<当院での治療の流れ>
鼓膜の診察、聴力検査を行い、問題のある難聴がないか調べます。原因疾患があればまずその治療を行います。老人性難聴などが原因の耳鳴りでも発症して半年以内であれば、薬や漢方による内服治療や家庭での音響療法を行います。耳鳴りを発症してから半年以上時間が経っており慢性化している場合では、薬物療法では効果が期待できない場合が多く、その場合はTRT療法を行います。

<TRT療法>
TRTは Tinnitus Retraining Therapy の略で、1990年代に米国で考案された治療です。日本では「耳鳴り順応療法」または「耳鳴り順応療法」と呼ばれます。耳鳴りを「不快な音」と認知してしまっているものを、訓練によってエアコンの音や川面のせせらぎの音のように「快適で意識しない音」へと無意識に順応させる治療法です。欧米でもわが国でも、約8割の方に有効であるとの論文が多く発表されており、約2割の方では無効です。TRT療法は指向性カウンセリングと音響療法からなります。

1. 指向性カウンセリング
 耳鳴りの仕組みをよく理解し、現在の状態を前向きに受け入れるための説明を行います。

2. 音響療法
 補聴器に似たサウンドジェネレーターTCI(Tinnitus Control Instrument)装置で、耳に優しい快適な雑音をわずかに聞くようにします。軽度~中等度の難聴であれば補聴器の効果もあるTCIを、高度難聴であれば補聴器のみで音響療法とします。1日6~8時間から徐々に装用時間を減らしながら、約6ヶ月~2年間使用し治療を行います。装置は3ヶ月間試用していただき、効果があれば購入して引き続き治療を行います。購入する場合は保険外のため9万円程度の費用がかかります。当院での診察は、最初は2週間後に、その後は1~2ヶ月に1回の受診で経過をみます。


TRT療法の一般的な治療経過
TRTは耳鳴において脳の順応を目標としているため、治療の即効性はなく、治療効果が実感できるまでは3~6カ月という報告がなされています。治療経過は個人差が大きく、一概には言えませんが、典型的な治療経過は以下の通りです。

1カ月:サウンドジェネレーターを付けている時は耳鳴りが楽であることを自覚する。
3~6カ月:イライラしたり、集中できないといった症状が軽減しているのを自覚する。
12カ月:耳鳴を意識することが減ってきたことが自覚できるようになる。
18カ月:サウンドジェネレーターをつけることを忘れるようになる。
24カ月:サウンドジェネレーターは時々使用するだけとなることが多くなっている。