睡眠時無呼吸症候群(いびき・日中の眠気)

いびきや日中の眠気を認めている患者さんの中には、睡眠中に呼吸が止まり酸素不足状態が続く「睡眠時無呼吸症候群」が潜んでいる可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は、心筋梗塞や脳卒中、さらに突然死などの循環器疾患のリスクが3~4倍も高くなることが知られています。また、睡眠時無呼吸症候群の循環器疾患の発症時間帯には特徴があり、夜間睡眠中の発症が2.5倍多いことも知られています。

【検 査】
耳鼻咽喉科一般診察
まず、空気の通り道(鼻、のど)に呼吸を妨げる原因となる異常がないかを内視鏡で詳しく調べます。鼻閉の有無、扁桃腺の大きさ、舌の大きさ、下顎の大きさなどが参考になります。
鼻閉などの原因がある場合は、そちらを優先して治療を行います。

アプノモニター
検査機器を当院から貸し出し、ご自宅で睡眠前に2日間装着していただき、無呼吸の状態をチェックします。無呼吸が現時点では心配のないものか、あるいは治療の必要があるものかを判定できます。10秒以上続く無呼吸あるいは低換気状態が1時間当たりどのくらいの頻度で生じているのかを示すAHI(無呼吸低呼吸指数)が最も大事な指標です。AHI 5以上であれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。特に問題となるのは頻度がAHI 20を超える場合です。統計上この回数を超える方は、将来的に高血圧や、不整脈、虚血性心疾患(心筋梗塞など)により、突然死を含め寿命が短くなるとの結果が出ています。
この検査は保険3割負担で2700円です。簡易検査の結果によっては、精密検査(ポリソムノグラフィー)を行うことも可能です。

 

【治 療】
(1)肥満の解消
いびき、無呼吸の方が全例肥満というわけではありませんが、肥満は明らかに気道を狭窄し睡眠時の状態に悪影響を及ぼします。後に紹介しますが、睡眠時無呼吸症候群の本格的な治療は身体的・経済的負担を伴うものです。肥満度を示すBMI(Body Mass Index)が25以上の方は、まずはご自分で出来るダイエットを最優先されることをお勧めします。

(2)薬物治療、外科的治療
鼻閉は、いびきや無呼吸の直接的な原因ではありませんが、間接的に悪影響を及ぼします。鼻閉を認める方に対しては睡眠前の点鼻薬や鼻閉を改善する内服薬を処方いたします。構造的に鼻閉が強い方では鼻のレーザー治療や手術も選択肢の一つです。また、扁桃肥大など元々のどの形が狭い方では扁桃腺の摘出や口蓋垂口蓋咽頭形成術(UPPP)などを行うことで改善する場合もあります。

(3)ナステント治療、口腔内装置(マウスピース)
CPAP療法の適応とならない、AHI 20未満の軽度・中等度の睡眠時無呼吸症候群の方が適応です。いびき、無呼吸は多くの症例で、軟口蓋(「のどちんこ」の辺り)や舌根の部位で狭窄が起こっており、器具を用いてそれを解消します。
軟口蓋部の狭窄に対して当院ではナステント治療を行なっております。
ナステント治療に関する詳細はこちらをご覧ください。
舌根での狭窄には口腔内装置(マウスピース)が有効な場合があります。睡眠前に口腔内装置(マウスピース)を装着することによって、就寝中の舌根の沈下を防止します。特に下顎の小さな方、舌の大きな方は有効な可能性があります。ご希望の方は近隣の歯科・口腔外科にご紹介いたします。

(4)CPAP療法
睡眠時にマスクを装着し、常時空気を送り込みことで空気の通り道の閉塞を防ぐ治療で、現段階では最も有効性が高く、安全かつ確実な治療です。
簡易検査でAHI 40以上または精密検査でAHI 20以上の方が適応となります。
使用する器械はレンタルさせていただき、使用状況や効果の判定を行うため月に1度の受診が必要になります。健康保険が適応されており、レンタル代・診察代を含め3割負担の方で1月あたり約5000円です。